海外ドラマと洋画のdiary

海外ドラマと映画のレビューや思ったことについて。ガールズ・ムービー、児童文学系物語を中心に感想綴ります。翻訳家を目指して英語の勉強もしています

『ハンドメイズテイル/侍女の物語』を見終わった感想&勝手に好きな登場人物ランキング

『ハンドメイズテイル』の簡単レビュー

・唯一無二の物語 ディストピアの最高傑作

全体主義国家の恐ろしさがこれでもかというほど示される

・映像の美しさと独特の世界観に没入

・人間の弱さと強さのコントラストが興味深い

・後半からの復讐劇には目が離せくなる

 

ポスター/スチール写真 A4 パターン5 ハンドメイズ・テイル 待女の物語 光沢プリント

ディストピアドラマとして話題になっていた米国ドラマ『ハンズメイズテイル』。ついに見終わりました!

 

見始めた頃はあまりの地獄っぷりに衝撃と怒りの気持ちまでが芽生え、正直、最後まで完走できるとは思っていませんでした。

 

ただ、フェミニズムが大きな主題だったことと、社会現象にすらなりつつあるほど話題になっていたため「とりあえずシーズン1を観てみて、無理だったらそこでやめよう」という気持ちで見始めました。しかし純粋にストーリーが面白かった。

 

特にキャラクターに奥行きというか深みがあり、どんどん引きつけられました。映像や世界観の美しさにも魅了され、ときに惚れ惚れするようなシーンも。地獄設定にも関わらず、「ちょっとこの世界を覗いてみたい」と思ってしまうほどでした。

 

それにしても……国家がレイプを公認するという恐ろしすぎる設定のドラマ。どう考えても今の日本では企画として成り立たないでしょう。批判殺到するに決まってます。その点で唯一無二さを感じたのも、最後まで見続けた理由です。

海外ドラマ『ハンズメイズテイル』のあらすじ

舞台は架空の独裁国家「ギレアド共和国」。近未来のアメリカでは環境汚染や感染症によって深刻な不妊が広がり、社会は崩壊の危機に。その混乱の中、誕生したのがキリスト教原理主義を掲げる「ギレアド共和国」。人々は厳しく階級化され、女性は人として当然の権利が奪われた国。主人公のジューン(侍女オブフレッド)は、子どもを産むためだけの"侍女"として支配者階級のある夫妻のもとへ仕えることを強いられます。娘と引き離され夫とも別れたまま、ジューンは理不尽な制度の下で生き延びつつ、家族と自由を取り戻すために戦うーー。

 

<エピソード数>

シーズン1:全10話
シーズン2〜3:各全13話

シーズン4〜6:各全10話

各エピソードの長さ(放送時間): 45〜60分程度

 

本当にね、地獄の設定っぷりに心がえぐられます。妊娠する能力がある女性は子供を産むためだけの存在として、国家と妻公認でレイプされる人権無視の世界。

さらにどんなに優れていても女性であるというだけで、運が良くて支配者階級の夫を支える妻(読み書き禁止、子供ができなければ夫のレイプを公認しなくてはいけない)か、侍女の教育係止まり。その他の女性はメイドか侍女か風俗嬢か奴隷という道しかありません。

 

支配階級として育った子供たちも女性ならまだ子供では?という年齢で結婚を強いられますし、同性愛者や不義密通をした者達は男女関係なく死刑か激しい拷問を受けるのです。

 

なんと恐ろしい世界……。でもね、観賞しながら気がついちゃったんですよ。あれ?これ全部、今もこの世の中で起こってるよね……!?と。

 

レイプや無理矢理風俗で働かされること、性的マイノリティに対する罰則、女性というだけで教育を受けられないもしくは制限される、若い女の子の見合い強制結婚などなど。もちろん国としてこれらのすべてを合法というか推進しているような「ギレアド共和国」のような国家は存在しませんが、ひとつひとつの事柄を考えてみると、現代でも平然と行われている国や地域がありますし、平然と行われていなくても、ほとんどの国で、いくつかは裏で行われているでしょう。

 

女であることを嘆き悲しむ気は無いのですが、なんというか「毅然として生きていかねば」というような、現代を生きる人として、そして女性としての責任のようなものを感じたのでした。

 

それから、「行きすぎた正義」や「正義という名目を利用する人がいる」ということもまざまざと見せつけられます。これらも、今の世の中に蔓延しいてることであり、警告を鳴らされているようでした。

主人公が、とにかく強い

ポスター/スチール写真 A4 パターン3 ハンドメイズ・テイル 待女の物語 光沢プリント

ヒットしたドラマの主人公ってだいたい視聴者から好かれますよね?ダメなところもあるけど、いざというときには頼りになるし優しい!みたいなキャラで。(おまけに、たいてい美男か美女。美男か美女じゃなかったら、抜群に面白い)。

『ハンドメイズテイル』の主人公ジューンはひと味違っていました。むしろドラマが進むにつれて「自分勝手なことばかりして周りを振り回してるジューンにイライラしてきた!」みたいな感想すらチラホラ(笑)。

 

まあでも、そこがミソだよなあと思います。多分、儚くかわいい女性が主人公だったら可哀想で仕方がなくて続きが観れません。

特にシーズンの中盤からあたりからは、えっ、ジューン、支配者階級の奴らに向かって直接ファーストネームで呼んでるし、こんな状況で支配階級の奴らと対等になってきてるよね!?しかも日に日に恰幅よくなってるし!強っ!という感じ。

 

シリーズの後半は、ジューンの復讐劇がメインになっていくので、辛さが少しだけやわらいでいきます。ハラハラはしますが。

『ハンズメイドテイル』好きな登場人物ランキング

ジューンは本作の主人公としてふさわしく異論なし!とはいえ、個人的には好きな登場人物ランキングに入るかと言ったらNO。なぜってジューンが悪いわけではなくキャラ設定が絶妙過ぎて、興味を掻き立てられる登場人物が多いのです。

 

というわけで、勝手に『ハンズメイズテイル』好きな登場人物ランキングです。

3位 ジャニーン&リディアおば(同列で2人)

・ジャニーン

ジューンやジューンの親友のモイラと一緒にギルドアに連れてこられた侍女の一人。

 

ジャニーン、まずモテモテなのも納得の美女です。笑顔が本当にかわいらしい。物語の序盤、ジャニーンは侍女としての教育を受ける際に反抗的な態度をとり、ひどい拷問され、私はそれにショックを受けたのですが、その後も何度も試練を乗り越え生き続ける、強い女性です。そして、我が子を抱く様子が女神のようで泣けます。子供のこととなると我を忘れてしまう、素直で愛情深い女性です。

主人公ジューンにとっては、ジューンの親友モイラもエミリーも差し置き、ジャニーンが一番の戦友でしょう。

そんなジャニーンは、すったもんだの挙げ句、監視役であるリディアおばにめちゃくちゃ可愛がられるようになりますが、その頃には、おばにもギレドアにもほとほと愛想(最初から無いけど)を尽かし、リディアに対しても自分に対しても何もかもに無関心になり、それがまたリディアを苦悩させます。

侍女達には皆もれなく生き抜いて、ギレドアを脱出してほしいとは思うのですが、気がついたら他の誰よりも応援していたのがジャニーンでした。

・リディアおば

侍女たちの教育係であり監視役であるAunt(おば)の一人。

 

正義とは何か?を考えさせられる人物でした。やってることはおかしい、おかしいのだけど、ジャニーンもジューンもリディアを心底憎むことができず。私もギレドアの中ではセリーナに続いてリディアおばにも、にじみ出る人間味を見せられ、さんざひどいことをしてきたにも関わらず無事でいてほしいと思うように。ギレドアで「おば」になる前、過去の朗らかなリディアの様子には鳥肌が立ちました。

終盤は「この正義は行き過ぎているのかもしれない」という疑念が湧き、葛藤する様子が見物です。

2位 セリーナ・ウォーターフォード

ジューンが最初に派遣された支配者階級の夫の妻で、ギレドア設立に関わった人物の一人。

 

一言でいうとめちゃ腹黒い。とにかく自分が1番で、目立ちたがりです。都合のいいときだけジューンを友達扱いしたり。

でも憎めない。よって「ちょっと可哀想かも」と同情したらジューンをいじめたり、支配階級の妻達も男達の犠牲になっているのは確かなわけで、そこから手を差し伸べてくれる人物が出てきてほだされるかと思いきやギレドアへの洗脳いかれっぷりを大爆発させたりと、何度も(勝手に)裏切られました。美人で品があるからつい味方したくなるのかしら……。

 

しかし紆余曲折の末、終盤にはセリーナ自身もある家庭で侍女と同じような扱いを受ける羽目になり……、そのスリリングさといったら!でもセリーナはあきらめません。強い!ギレドアは結局は強い女性を作っている!?

ちょいネタバレですが、終盤に、私服のジューンとメイド(そのシーンでは元メイド)のリタにお茶を煎れるシーンがあります。「年月が経ったな」なんて思いつつ、階級が崩壊したその風景にカタルシスを感じてしまいました。

見終わって気がついたのですが、この物語の登場人物たちは男性も含めそのほとんどが拷問か拷問級の苦しみを味わっており、その多くが自分を変えずにはいられない気がします。でも、セリーナが一番変わったかもしれません。

1位 ジョセフ・ローレンス

最初は謎の男でした。敵?味方?何なの?味方のような行動をしておきながらも、ジューンを突っぱねたり。しかも彼もギレドア設立者の一人。

しかし愛妻の不幸をきっかけに、謎めいた仮面が剥がれて、いい人になっていきます。正義という名目で進められる支配者男性たちの思惑に耐えられなくなっていくのでした。ジャニーンを性奴隷扱いをする司令官には「この豚野郎」と叱りつけジャニーンをかばうなど、ギレドアで唯一のちゃんとした男性です。

特に印象に残っているシーンがあります。ローレンスは自分が家を空けることになり、後妻に言います。「ベッドに入る前にあの子(奥さんの連れ子・女子)に本を読んであげてほしい」と。後妻である奥さんは戸惑います(女子は全員読み書き禁止のため)。しかし念を押すローレンス。「この子は何よりも学ぶことが好きだ。だからそれを叶えてあげなくてはいけない」と。はあ、泣ける。というか思い出して、今書きながらボロボロ泣いた。本当にかっこいい。

かっこいいのですが、それ故、女性や弱き者たちを思うままにしたい悪い男達からは疎まれ、地位、というか命が危ぶまれる事態に……。最終回には決死の行動を取り、その結末に胸が熱くなります。ダントツで1番好き!

その他の登場人物

・フレッド・ウォーターフォード司令官

ジューンが最初に仕える司令官でセリーナの夫。ギレアド体制の幹部でありながら、裏では体制の規律を破る矛盾した人物。権力欲と弱さを併せ持つ。

いや〜、絶妙にキモい演技に、素直に感心しました。!

・ニック・ブレイン

ウォーターフォード家の運転手。寡黙で謎が多いが、ジューンにとって心の支えとなる人物。体制側か抵抗側か判然としない立場にある。

まさかの行動に出てびっくりした!

・モイラ

ジューンの親友。自由で反抗的な性格で、ギレアド体制に強く抵抗する。彼女の生き方がジューンに勇気を与える。

ジューンの親友ってのがわかる!

・ルーク・バンクール

ジューンの夫。ギレアド成立前の世界で家族として暮らしていた。夫が待っているということがジューンの希望の象徴となっている。

妻がひどい目に遭ってるのを知っても助けることができないのが、不憫でならない。

・エミリー(オブグレン)

元大学教授。侍女として過酷な罰を受けながらも、知性と怒りを内に秘めて抵抗を続ける人物。

誰よりも「やるときはやる」女。

ファイナルシーズンを見終わり……

最終回は納得できなくもない終わり方だったのですが、正直「ここで終わるか!」という気持ちも。調べてみたところ、すでにスピンオフ作品が始動しているとか。え〜なんだよ〜ファイナルじゃないじゃーん。

 

ただし現在わかっているのは、ジューンの娘が登場することとリディアおばの続投という情報のみですが……。

 

というわけで、いつかこのディストピアは戻ってきます。

 

怖かったけど、独特の世界に気がついたら没頭。見て良かった作品です。

 

2025年12月現在、『ハンドメイズテイル/侍女の物語』はHuluで配信中です。